【久留米市】高良山と高良大社 筑後一宮が織りなす1600年の歴史と絶景、そして神々の物語

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高良大社:筑後一宮が織りなす1600年の歴史と絶景、そして神々の物語

福岡県久留米市にそびえる高良山(こうらさん)の頂近くに鎮座する高良大社(こうらたいしゃ)は、古くから筑後国の一宮(いちのみや)として、またかつては「九州の宗廟(そうびょう)」とも崇められてきた、まさに九州を代表する古社です。その歴史は1600年以上に及び、訪れる人々に多様な魅力と心に残る体験を提供しています。今回は、この高良大社の多面的な魅力と、そこで得られる貴重な体験について深掘りしていきます。

悠久の歴史と壮麗な社殿

高良大社の創建は、伝承によれば履中天皇元年(りちゅうてんのうがんねん)仁徳天皇55年または78年に鎮座したとも伝えられています。これにより、その歴史は4世紀頃にまで遡る、非常に古い神社であることが分かります。

現在の社殿は、久留米藩第三代藩主である有馬頼利公(ありまよりとしこう)によって再建されたもので、九州最大級の規模を誇ります。その豪壮な造りは、訪れる人々に力強さと厳粛な雰囲気を与えてくれます。拝殿の天井には江戸時代に描かれた絵がそのまま残されており、本殿にお参りの際にはぜひ見上げてみてください。

高良山は、かつては「高牟礼山(たかむれやま)」と呼ばれ、もともと高木神(=高御産巣日神、高牟礼神)が鎮座していました。高良玉垂命(こうらたまたれのみこと)が山を借りて鎮座したという伝説が残っており、その後「高良」山と呼ばれるようになったとされています。明治時代には神仏習合が盛んであった高良山から仏教寺院が廃絶されましたが、現在の久留米市役所の支所名や小中学校の校名には「高牟礼」の名が残されています。

厄除け・延命長寿の守護神と多様な神々

高良大社の中心に祀られているのは、主祭神の「高良玉垂命(こうらたまたれのみこと)」です。この神様は、古くから筑紫の国魂として崇められ、厄除け・厄除け開運、延命長寿、交通安全、福徳円満といった生活全般のご利益があると親しまれています。また、芸能の神としての信仰も篤いです。

主祭神の他に、本殿の左殿には住吉大神(すみよしおおかみ)が、右殿には八幡大神(はちまんおおかみ)が祀られています。さらに、本殿内の「御客座(おきゃくざ)」には豊比咩大神(とよひめおおかみ)が合祀されており、高良玉垂命の配偶神であるという説もあります。

高良大社の境内や山中には、多くの摂末社(せつまっしゃ)や兼務社が点在し、それぞれに多様な神々が祀られています。

  • 奥宮(奥の院)は「高良山勝水(こうらさんかつみず)」と呼ばれる霊水が湧き出るパワースポットとして有名で、その水を飲むと勝負に勝てるとの言い伝えがあります。これにちなんだ「勝守」というお守りも人気です。
  • 高良玉垂命の御子神9柱を祀る高良御子神社(こうらみこじんじゃ)。
  • 武内宿禰公を祀る印鑰神社(いんにゃくじんじゃ)。
  • 夫婦恵比須神を祀る市恵比須社(いちえびすしゃ)。
  • 天照大神を祀る伊勢天照御祖神社(いせあまてらすみおやじんじゃ)。
  • 倉稲魂命を祀る大学稲荷神社(だいがくいなりじんじゃ)。
  • 水波能賣命を祀る味水御井神社(うましみずみいじんじゃ)は、筑後国の総社とされています。

これらの神々を巡ることで、より深い信仰の世界に触れることができます。

四季折々の自然と圧巻の展望

高良大社は、その信仰の深さだけでなく、豊かな自然と息をのむような絶景でも知られています。

  • 社殿のすぐそばにある展望所からは、久留米市街地や筑後平野、筑後川の流れを一望できます。特に夕景や夜景は美しく、「久留米の夜が始まる」の様子を眺めることができます。天候が良い日には、遠く長崎県の雲仙普賢岳まで見渡すことが可能です。
  • 秋には紅葉の名所として人気を集め、山全体が赤く色づく光景を楽しむことができます。
  • 山中には、表皮が黄、緑、黒の3色に彩られた珍しい竹林「高良山のモウソウキンメイチク林」があり、国の天然記念物に指定されています。
  • 久留米つつじの原木に繋がる貴重な群生もあり、開花時期には美しい花々が咲き誇ります。
  • 国の重要文化財である石造大鳥居(一の鳥居)は明暦元年(1655年)に久留米藩主有馬忠頼によって寄進されたもので、その豪壮さは必見です。

アクセスの利便性と伝統的な祭事

高良大社の社殿までは131段の石段が続いていますが、足腰が不自由な方やベビーカー利用者でも安心して参拝できるように、階段の横にはスロープカーが設置されています。約3分で境内に到着するため、気軽に壮大な景色を楽しむことができます。車でのアクセスも可能で、久留米ICから約15分と便利です。

高良大社では年間を通して多くの祭事が行われています。

  • 毎年6月1日・2日には、厄祓祈願大祭である「川渡祭(かわたりさい)」が開催されます。通称「へこかき祭り」と呼ばれ、赤い肌着などを身につけた人々が大きな茅の輪をくぐり、厄除けを祈願します。
  • 年間最大の祭典は、10月9日から11日にかけて行われる「高良大社例大祭(高良山くんち)」です。この祭りでは、久留米市指定文化財の「高良山獅子舞」や「御井町風流」などが奉納され、多くの参拝者で賑わいます。
  • 特に重要な祭儀とされるのが「高良大社神幸祭(じんこうさい)」で、50年に一度、千人規模の大行列が市内を練り歩く壮大な祭りです。これはまさに華やかな時代絵巻の再現と言えるでしょう。直近では平成4年(1992年)に千六百年御神期大祭として執り行われました。

御朱印と旅の思い出

高良大社では、参拝の記念として御朱印をいただくことができます。通常の直書き御朱印と期間限定の御朱印の2種類があり、桜をモチーフにしたものや赤い表紙の大判サイズなど、2種類の御朱印帳も販売されています。御朱印の受付時間は9時から15時30分までです。

高良大社は、その長い歴史、壮大な社殿、豊かな自然、そして多様な神々との出会いを通じて、訪れる人々に深く心に残る体験を提供してくれる場所です。厄除けや開運を祈願するだけでなく、美しい景色を堪能し、歴史に思いを馳せる、そんな素晴らしい旅の目的地として、ぜひ高良大社を訪れてみてはいかがでしょうか。

高良山の地理と自然環境

高良山は福岡県久留米市に位置する標高312.3メートルの山で、耳納山地の西端に位置しています。毘沙門岳を主峰とし、本宮山、鷲ノ尾山、勢至堂山、虚空蔵山、吉見岳の5つの峰から構成される山域を形成しています。地質構造は変成岩層を基盤とし、その上に角礫岩、さらにロームの層が重なっています。

景色

絶景の展望所: 高良山中腹の高良大社からは、久留米の夕景や夜景を一望できます。久留米市街地、筑後平野、筑後川、有明海、そして天気が良い日には長崎県の雲仙普賢岳まで見渡せる圧巻の景色が広がります。

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